理科三類と医学部の判断基準とは
「東大理科三類」と聞いて多くの方がイメージするのが「医学部」や「医学科」です。いずれも東大に実在する科類や学部学科ではありますが、これらは必ずしもイコールで結ばれている訳ではありません。理科三類は医学部に属しているのではなく、実は教養学部に含まれているのです。
今回は、東大の謎とも言える「理科三類」と「医学部」に注目して、その関係性や違いについて少しずつ解明していきましょう。これを読み終える頃にはあなたも東大に詳しくなっていること間違いなしです。
東大の理科類について知ろう
東大には文科一~三類、理科一~三類があり、それぞれに特徴があります。理科三類について知るためには、他の理科一・二類との違いも併せて知っておくことが大切。そこで、まずは東大に3つある理科目について、それぞれの特徴を比べながら見ていきましょう。理科一~三類で学ぶ内容は、大きく分けて以下の通りです。
理科一類
数学、物理学、化学を中心とした数理科学や物理化学、生命科学の基礎を修得し、自然の基本法則に関する探究心を養います。科学や技術、社会のかかわりへの理解を深める学科です。
理科二類
生物学、物理学、化学を中心とした生命科学や物質科学、数理科学の基礎を修得し、自然の様々な法則に関係する探究心を養う学科。科学や技術、社会のかかわりへの理解を深める講義が主です。
理科三類
生物学、化学、物理学を中心とした生命科学や物質科学、数理科学の基礎を修得し、人間についての探求心を養います。生命と社会のかかわりへの理解を深める学科。
このように、同じ理科目でも科類によって学習内容に特徴があり、理科三類では一・二類に比べてより生命に対する知識の修得に深いかかわりがあることが分かります。
いずれも日本最難関の大学と言われる程、高い偏差値を求められていることは言うまでもありません。日本のトップでもある東大の志願者は例年募集人員を大幅に超過。特に、理科三類では5倍近い倍率が記録されています。2017年(平成29年)から過去5年間に遡った志願者や倍率は以下の通りです。
過去5年間の受験状況
理科一類
- 2017年(平成29年)
- 募集人員…1,108名
- 志願者数…2,901名
- 最終合格者数…1,126名(倍率2.6倍)
- 2016年(平成28年)
- 募集人員…1,108名
- 志願者数…2,947名
- 最終合格者数…1,135名(倍率2.6倍)
- 2015年(平成27年)
- 募集人員…1,108名
- 志願者数…3,049名
- 最終合格者数…1,128名(倍率2.7倍)
- 2014年(平成26年)
- 募集人員…1,108名
- 志願者数…2,984名
- 最終合格者数…1,128名(倍率2.6倍)
- 2013年(平成25年)
- 募集人員…1,108名
- 志願者数…2,826名
- 最終合格者数…1,128名(倍率2.5倍)
理科二類
- 2017年(平成29年)
- 募集人員…532名
- 志願者数…2,107名
- 最終合格者数…549名(倍率3.8倍)
- 2016年(平成28年)
- 募集人員…532名
- 志願者数…1,877名
- 最終合格者数…550名(倍率3.4倍)
- 2015年(平成27年)
- 募集人員…532名
- 志願者数…2,100名
- 最終合格者数…547名(倍率3.8倍)
- 2014年(平成26年)
- 募集人員…532名
- 志願者数…2,131名
- 最終合格者数…547名(倍率3.9倍)
- 2013年(平成25年)
- 募集人員…532名
- 志願者数…2,007名
- 最終合格者数…548名(倍率3.7倍)
理科三類
- 2017年(平成29年)
- 募集人員…97名
- 志願者数…527名
- 最終合格者数…98名(倍率5.4倍)
- 2016年(平成28年)
- 募集人員…97名
- 志願者数…546名
- 最終合格者数…98名(倍率5.6倍)
- 2015年(平成27年)
- 募集人員…100名
- 志願者数…481名
- 最終合格者数…100名(倍率4.8倍)
- 2014年(平成26年)
- 募集人員…100名
- 志願者数…509名
- 最終合格者数…100名(倍率5.1倍)
- 2013年(平成25年)
- 募集人員…100名
- 志願者数…554名
- 最終合格者数…100名(倍率5.5倍)
これらの数字からも分かるように、理科三類の難易度は格別。倍率約5~6倍もの狭き門をくぐりぬけた優秀な学生のみが進むことのできる道だと言えます。
ところが、理科三類に合格しただけでは、まだ医学部へ進学したことにはなりません。文化一~三類、理科一~三類の学生が所属するのは、すべて同じ「教養学部」なのです。その秘密を次の項目でご紹介しましょう。
リベラル・アーツ教育に基づいた前期課程、専門的に学ぶ後期課程
理科一~三類の入学試験に合格した学生は科類にかかわらず「教養学部」に所属し、そこで前期課程の2年間を過ごしたのち、それぞれが専門とする学部へ進学します。これは、リベラル・アーツ教育に基づいた考え方。
リベラル・アーツ教育とは、自分自身の専門分野だけでなく幅広い知識を得て視野を広げることを目的とした教育方法です。リベラル・アーツ教育の歴史は古く、奴隷制のあった古代ギリシャやローマにおいて「文法」「修辞学」「論理学」「算数」「幾何」「天文」「音楽」の7つを自由7科としていました。これらは人間が自由に生きるために必要な素養だと考えられたことが始まりだと言われています。日本ではこれらを「教養」と訳し、専門分野を学習すると同時に社会に出るために必要な要素だとして大学のカリキュラムに組まれているのが一般的です。
リベラル・アーツ教育を行なっている学校は東京大学に限らず、ICU(国際基督教大学)や桜美林大学、玉川大学など多数。東大の場合は、前期課程教育の2年間を教養学部で学び、後期課程の2~4年間を専門学部で学びます。
上記でご紹介した理科一~三類の学習はすべて前期課程の教養学部で取り組む内容ですが、後期課程では主に以下のような学部や学科に分かれて、専門的な知識を修得。詳しく見てみましょう。
理科一類
「工学部」「理学部」「薬学部」「農学部」「教養学部」「医学部」に分かれます。
「工学部」は建築学科、社会基盤学科、都市工学科、機械工学科、航空宇宙工学科、産業機械工学科・機械情報工学科、電気工学科、電子工学科、電子情報工学科、応用化学科、化学システム工学科、化学生命工学科、物理工学科、マテリアル工学科、システム創成学科、「理学部」は数学科、物理学科、情報科学科、地球惑星物理学科、地球惑星環境学科、天文学科、生物学科、化学科、生物化学科、「薬学部」は薬科学科、薬学科(前期課程と合わせて6年制)、「農学部」は応用生命科学課程、環境資源科学課程、「教養学部」は基礎科学科、広域科学科、超域文化科学科、地域文化研究学科、生命・認知科学科、総合社会科学科、「医学部」は健康総合科学学科(旧・健康科学・看護学科)でそれぞれ学習。
理科二類
「農学部」「薬学部」「理学部」「工学部」「教養学部」「医学部」に分かれます。
「農学部」は応用生命科学課程、獣医学課程(前期課程と合わせて6年制)、環境資源科学課程、「薬学部」は薬科学科、薬学科(前期課程と合わせて6年制)、「理学部」は地球惑星環境学科、化学科、生物化学科、生物学科、「工学部」は都市工学科、機械工学科、産業機械工学科、機械情報工学科、電気工学科、電子情報工学科、電子工学科、マテリアル工学科、物理工学科、計数工学科、応用化学科、化学生命工学科、化学システム工学科、システム創成学科、「教養学部」は基礎科学科、広域科学科、超域文化科学科、地域文化研究学科、生命・認知科学科、総合社会科学科、「医学部」は健康総合科学学科(旧・健康科学・看護学科)、医学科(前期課程と合わせて6年制)でそれぞれ専門的な知識を修得。
理科三類
「医学部」の医学科(前期課程と合わせて6年制)に進みます。
これらの学部や学科を見て予想できますが、東大の前期課程で理科三類を受験していなくても、後期課程で医学部に進学することが可能です。上記で記した学部や学科は、前期課程での各科類から主に進学先として選ばれる進路ですが、「全科類枠」というどの学部へも自由に進学できる枠が設けられたことにより、難易度は高いものの上記に記載していない科への進学が可能となっています。
反対に、希少な例ではありますが理科三類に合格したからといって必ずしも医学部医学科へ進まなければならない訳ではありません。つまり、医学部とは東大の後期課程において進学できるひとつの学部であり、理科三類とは数ある科類の中で最も医学部医学科に近い科類のひとつだと言えるのです。
とは言え、すべての学生が希望通りの進路に進めるとは限らないため注意が必要。ここが理科三類と医学部の関係についての重要な部分で、その鍵となるのが次の項目でご紹介する「進学振分け」、通称進振りと呼ばれる物です。
学部を決める、進学振分けとは
教養学部としての2年間が前期課程だとご紹介しましたが、前期課程で1年半経った時点での学生の志望と、それまでの成績をもとに、進学振分けが行なわれます。
進学振分けとは、大学3年次、つまり後期課程からの進学先を決める制度を指し、前述したリベラル・アーツ教育の一環。前期課程で専門分野外でも幅広く学習することで、抱いていた進路先以外に興味が出た場合でも柔軟に進路変更することが可能です。では進学振分け、進振りの仕組みを詳しく見てみましょう。
進振りには第1~3段階があり、学生の約7割が第1段階で内定し、約3割が第2段階で内定します。そして第1~2段階で僅かに残った学生を対象に、第3段階が実施される仕組みです。
また、進振りの選択方法は「指定科類枠」「全科類枠」の2つ。「指定科類枠」とは、理科一類から工学部、理科二類から農学部、理科三類から医学部のように進学先の学部と対応関係にある科類や、対応していなくても特定の科類から一定数の進学が認められる場合の枠です。そして「全科類枠」とは、すべての科類から進学できる枠。全科類枠を利用することで、文科から理科、または理科から文科など専門分野の変更も可能となりました。
進学において各学部や学科が「要求科目」「要望科目」を定めている場合が多く、特に文科から理科への進学を考えている場合には注意しておかなければなりません。
「要求科目」とは、一定の期間までに該当する科類の学生が履修しなければならない科目を指し、年度によって異なります。例えば、2015年(平成27年)に医学部医学科が定めた要求科目は、文科全類・理科一類の学生に対して「生命科学Ⅰ」または「生命科学Ⅱ」のいずれかの履修でした。もしもこの単位を修得できなかった場合には、たとえ進学が内定していたとしても取り消しになるため、十分な注意が必要。
「要望科目」とは、希望の学部・学科に進学する前に履修しておくことが望ましい科目を指し、履修していなくても進学は可能です。ただし、学部や学科によっては、履修していないことで後期課程において授業に付いていけなかったり苦労をしたりする可能性もあるため、前期課程の内に履修しておくことをおすすめします。例えば、2015年(平成27年)に医学部医学科が定めた要望科目は、理科三類の学生が「自然科学ゼミナール(医学)」を履修することでした。
要求科目は、原則として2S1ターム終了までに修得しておくことが条件です。東大は年間を通して2学期制を取っており、前半がSセメスター、後半がAセメスターと呼ばれています。さらに、それぞれのセメスターがさらに前半・後半に分かれるターム制を導入。したがって、2S1タームとは、2年次のSセメスターの前半を表します。中には要求科目が2S2タームや2Sセメスターに指定されていることもあり、その場合、進学先の学部を志望登録するためには該当する要求科目を修得しておかなければなりません。
ご紹介した2015年(平成27年)を例にすると、理科三類から医学部医学科へ進学する際には要望科目のみ提示されていますが、文科や理科一類から進学したい場合には要求科目を履修することが必須。理科三類でなくとも医学部へ進学することは可能ですが、要求科目を修得するなどの高いハードルを踏まえ、入学直後の1S1タームから先を見据えた計画的な科目履修が重要です。
進振りで医学部医学科へ進学するまでの道のりとは
ここでは、実際に医学部医学科へ進学が内定するまでの具体的な道のりについてご紹介しましょう。学生たちは3年次からの学部を分ける進振りを目指して、早い場合は1S1ターム、遅くとも2S1タームには準備に取り掛かります。まずは、自分の進路を見据えた準備段階。ここでは、以下のように3つのステップがあります。
【準備段階その1】各学部学科の受け入れ予定定員が確定
2S1タームが始まって間もない4月の半ばに、学生へ配られる「進学選択の手引き」によって各学部学科の定員が確定。人数は年度によって異なる場合があります。ここで発表された定員枠を参考にしながら、イメージを掴みましょう。
【準備段階その2】学部学科のガイダンス
5月中旬までを目安に、気になる学部や学科のガイダンスに参加。5月中旬には、東大の本郷・弥生キャンパスにて「五月祭」が開催されるため、学部学科の雰囲気や取り組みなどを知るためにも見学するのがおすすめです。
医学部では4年生が毎年企画を出しており、2017年(平成29年)5月に行なわれた五月祭では、講師を交えての学生質問企画や模擬授業、基調講演、パネルディスカッション、講演会などが行なわれました。
2016年(平成28年)には、3Dプリンターで作成した臓器や、学術論文などの展示、内視鏡手術やAEDの体験など医学部ならではの催しが実施されるなど、五月祭は医学部の様子を知る絶好の機会です。
【準備段階その3】第1段階の志望学部を登録
6月の上旬には、1度目の志望登録を実施。この時点ではまだ要となる2S1タームの成績も出ていないため、一種の集計のような位置付けで、その後の志望変更も可能です。6月上旬頃から、いよいよ進振りの第1段階が始まります。以下のステップを参考にしましょう。
【第1段階その1】志望者数の第1次発表
6月上旬頃、1Aセメスターまでの成績をもとに、進振り第1段階における各学部の志望者数が発表されます。2017年度(平成29年)までは、進学可能最低点があり「低点」「ボーダー」などといわれ、理科三類以外から医学部医学科へ進学するには平均して約90点前後、理科三類から進学する場合には平均70点前後の成績を持っていなければなりませんでした。
2018年度(平成30年)からは「受入保留アルゴリズム」を導入したことで、自身の成績で内定可能な学部・学科から、希望するもので順位が最も高いところに内定できるように変更されています。
【第1段階その2】進学内定者の発表
学生によっては、7月上旬には進学先の学部学科が内定。ここで70%の学生が進学する学部・学科が決まります。第1段階で内定しなかった学生は、次の第2段階へ。2S2タームの後半でもある7月上旬からは、第2段階のスタート。第1段階で内定しなかった学生にとっては勝負所でもあります。
第2段階のステップを確認してみましょう。2018年度(平成30年)からは第2段階から志望動機書の提出が必要な学部・学科もあります。
【第2段階その1】志望学部を登録
7月上旬に実施。2018年度(平成30年)からは第2段階から学部をまたいで志望することができるようになります。最高3つまでしか選択できなかった志望登録数も無制限に。従来までは第3段階で必要としていた志望動機書の提出が課される学部・学科もあるため、事前に確認が必要です。
また、第2段階以降は自身の成績や過去の動向にとらわれず本当に自身が志望する学部・学科へ志望できるようになったため、志望者集計は行なわれません。
【第2段階その2】進学内定者の発表
7月下旬に内定者の発表があります。この時点で進学先が内定すれば、安心して夏休みを迎えることができるでしょう。ただし、内定しなかった場合は夏休み中に行なわれる第3段階へと進まなければなりません。
9月中旬から第3段階の進学志望者登録があり、後半には内定者発表がありますが、もしも第3段階でも内定しなかった場合に残された選択肢はただひとつ、「再志望」です。これは、学部学科の志望は問わず定員割れしている学部へ志望するかどうかを決める最終手段。再志望の内定者は9月上旬に発表されますが、それでも内定しなかった場合は強制的に1年生へと降年となり、秋からは1Aセメスターが再スタートとなります。
また、第1~3段階で内定した学生もまだ油断は禁物。9月上旬に発表される2S2ターム、2Sセメスターの成績において要求科目の単位を修得できていなかった場合には、内定取り消しになるだけではなく降年も免れません。このように、いくつもの段階を経て進学先の学部が決定します。
東大医学部医学科とは
東大医学部は東大の中でも最難関学科と言われています。世界的にもハイレベルな講義を受けられる、最高峰の学部。東京都文京区本郷に位置する本郷キャンパスにあり、広大な敷地内には医学系研究科や医学部の他、東京大学医学部付属病院、法学部、工学部、文学部、理学部などをはじめとする学部や研究科、大講堂、総合図書館、テニスコート、地震研究所、総合研究博物館などの施設があります。
医学部には医学科と健康総合科学科(旧・健康科学・看護学科)がありますが、医学科は前期課程と合わせて6年制です。2016年(平成28年)の直近4年間の偏差値を見てみましょう。
2013年(平成25年)は73.8、翌年の2014年(平成26年)は74.2、さらに2015年(平成27年)は77.2、そして2016年(平成28年)は77.2となっており、2016年(平成28年)には国立・公立・私立を含めた医学部の偏差値ランキングで82校中1位に輝いています。
医学科を卒業したあとは、医師国家試験に合格して医師免許を取得。その後東京大学付属病院をはじめとする様々な病院にて臨床研修を受け、臨床医を目指す学生が最多です。その他の進路としては、基礎医学研究課程への進学や、国際医療協力、医事管理への従事が挙げられます。
医学部医学科で学べる科目も確認しておきましょう。細胞生物学や解剖学、薬理学、病理学、放射線医学、基礎神経医学、小児医学、加齢医学、生体管理医学など20科目以上です。医学部医学科に進む学生のほとんどが理科三類からの出身。そのため、医学部医学科への進学を考えているならば、東大入学の段階で理科三類へ合格しておくのが望ましいと言えます。
入学試験は前期日程・後期日程・推薦入試がありましたが、2016年(平成28年)より後期日程は廃止され、センター試験と二次試験との総合点で合否を判定。これまでの仕組みと異なるため注意しましょう。
さらに、理科三類を受験する場合には、もうひとつ注意すべき点があります。それは、面接試験の導入。2018年(平成30年)の入試から理科三類ではひとりあたり10分程度の面接試験が実施されます。これは、1999~2007年(平成11~19年)の入試以来、11年振りの再導入です。理科三類への入学は実質的に医学部医学科への進学に繋がるといっても過言ではありません。そこで、医療や医学研究に携わる資質を見極め、学力試験だけでなく総合的に判断することが面接試験の大きな目的です。面接試験の再導入に基づき、2018年(平成30年)からは入学志願票や調査書に加え、志望動機書の提出も必要となるため、注意しましょう。
※この記事は、2018年4月時点の情報に基づいて作成されています。
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