柔道整復師について
「柔道整復師」とは、患者の自然治癒能力を引き出し、ケガへの施術を行う、国家資格を持った専門家です。柔道整復師の施術、キャリアプラン、資格取得や養成施設などについて紹介します。
柔道整復師とは
柔道整復師は、厚生労働大臣免許のもとで脱臼、骨折、捻挫、打撲、挫傷(筋・腱の損傷)など、外傷性のケガへ施術をする人の名称で、いわゆる「整骨院・接骨院の先生」として知られる職業です。大学・専門学校などの養成施設において、基礎医学に加えて、ケガへ施術する柔道整復術と関係法規を学び、国家資格を取得して柔道整復師になることができます。
柔道整復師の仕事内容と役割
柔道整復の「手技」(しゅぎ)によって施術するのが主な仕事です。患者の骨を柔道整復師の手でもとの状態に戻したり、包帯固定・テーピング、ストレッチ・トレーニングなどを行って手術や薬を用いずに患者の自然治癒力を最大限に引き出して施術を行ったりします。
柔道整復師と同様、国家資格である理学療法士は、病院や介護福祉施設などに勤務し、医師の依頼でリハビリテーションを行う専門家ですが、開業はできません。一方、柔道整復師はケガの処置から治癒後の機能訓練までに対応する、ケガへの施術の専門家。自分で接骨院・整骨院を開業する開業権を持つ点で、理学療法士とは異なります。
柔道整復師に向いている人とは
柔道整復師に向いているのは、自分で考えて行動ができる、コミュニケーション能力が高い、向上心がある、健康で清潔感を持った人です。
診断を下して施術を行い、患者の不調や痛みに寄り添ってコミュニケーションを取ることで、信頼関係を築く力が必要とされます。また、最低限の知識や能力で満足するのではなく、新しく生まれた病気とその対処法を学ぼうとする向上心は、施術者としての成長に欠かせません。
柔道整復師が活躍する分野
ケガの予防・施術、リハビリテーション、トレーニング指導など、地域医療からスポーツ関連の領域まで、柔道整復師が活躍する分野は多種多様。職場としては、整骨院・接骨院、総合病院、整形外科クリニック、リハビリテーションセンター、スポーツチーム、高齢者福祉施設などです。また、独立開業して地域社会の健康に貢献する道もあります。
柔道整復師の施術に関する知識
柔道整復師に許可されている施術、他の医療専門家との連携が必要な対応など、柔道整復師の対応範囲について見てみましょう。
柔道整復師が扱う主なケガと対処法
柔道整復師が施術できる症状は、「柔道整復師法」により急性・亜急性の骨折・打撲・捻挫・脱臼・挫傷(肉ばなれ)であると規定されおり、骨折・脱臼については応急処置を除き、医師の同意を得なければなりません。主に整復と患部の固定によって回復を促していく対応となります。
柔道整復師と健康保険の取り扱い
柔道整復師が扱う骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷(肉ばなれ)の施術には、健康保険・労災保険が適用できます。長期にわたる対応が必要な患者にとってはありがたい制度ですが、単なる肩こり、筋肉疲労、神経痛、慢性病などからくる痛みや不調に対する施術は保険対象外です。
柔道整復師の施術と医療行為の関係
柔道整復師法で、手術、注射、レントゲン検査、投薬治療行為とその指示は、禁止されています。患者の症状が、柔道整復師が対応できる範囲を超えている場合は、それ以上の施術ができないことを患者に説明したうえで、すみやかに医師または他の医療機関を紹介。このような他の医療機関との連携も、患者との信頼関係を築く上で大切です。病院と柔道整復師との良好な関係は、理想的な形のチーム医療として、地域社会を支えることにもつながります。
柔道整復師の施術方法
柔道整復師による施術は、投薬、麻酔、注射、手術、レントゲンなどを使用せず、ほとんどが手によって施術されるところが特徴です。問診、視診(患部の観察)、触診で患者の痛みや不調を把握することから始まる柔道整復術の施術法は、「整復法」、「固定法」、「後療法」の3つに大きく分けられます。
整復法は、患部の骨や関節を、手でもとに戻す施術。固定法は、脱臼や骨折した患部をギブスや包帯などで固定して回復させる方法です。後療法は、患部の回復を早めるために様々な刺激を加える方法で、「手技療法」、「物理療法」、「運動療法」から構成されます。
手技療法の基本と応用
手指を使って直接患者の体に刺激を加え、自然治癒力を引き出すのが手技療法です。患部などの対象部位を強く擦る「強擦法」、軽く擦る「軽擦法」、揉む「揉捏法」(じゅうねつほう)、叩く「叩打法」(こうだほう)、震わせる「振せん法」、押す「圧迫法」などがあります。
血液などの循環を活性化させて新陳代謝を促進し、患部の機能回復を導く熟練技術によるアプローチで、筋肉や関節の動きを整え、鎮静効果も期待できる療法です。
物理療法の役割と効果
物理療法には、患部を冷やす「冷却療法」、温める「温熱療法」、水圧・浮力など水の特徴を用いた「水療法」、レーザー・赤外線の光・熱を利用した「光線療法」、人体に流れる生体電流を刺激する「電気刺激療法」、機械的な振動を与える「マッサージ療法」、機械で患部を伸長させる「牽引療法」などの種類があります。
熱・冷たさ、電気・光などを発する機器によって、手技だけでは届かない部分を刺激し、患者の持つ自然治癒力を高める療法です。
運動療法を用いた対処法
運動療法には、柔道整復師が手で患者の部位を動かして行う「ストレッチ」、小さな運動の繰り返しで関節の動きを向上させる「関節モビライゼーション」、動作を誘導させた筋肉運動で神経回路に働きかける「PNF」(神経筋促通法)などの方法があります。骨折や脱臼の際、ギプスなどで固定された部位の筋力を回復させるのが目的で、固まった関節の動きを滑らかにし、狭くなった関節の可動域を広げようとするものです。
柔道整復師のキャリアと将来性
国家資格を持つ柔道整復師は多分野で活躍できるうえ、開業権を持っていることもキャリアの幅を広げます。
接骨院・整骨院での勤務
接骨院・整骨院などの治療院に勤務すると、施術の経験を積み重ねることができます。将来独立開業を目指すなら、勤務しながら治療院経営を間近で学べる貴重な機会です。
スポーツトレーナーとしての活躍
柔道整復師の手技は、スポーツクラブや様々なスポーツチームの専属トレーナーとして、アスリートの調整やケガへの施術などにも活かすことができます。高い技術を求められる業界のため、柔道整復師の資格を取得したあと初めて就く職業としては、難易度が高いのが特徴です。
介護業界での働き方
柔道整復師は、老人ホームやデイサービスで働く「機能訓練指導員」になることができます。リハビリテーションや、骨折や捻挫への対応が主な業務。ケガのあとの早期機能回復など、柔道整復師の技術を介護に活かすことができます。
柔道整復師の独立のメリット
柔道整復師が整骨院や接骨院を開業するには、治療院や病院などに3年以上勤め、実務を行った経験が必要です。自宅などで接骨院・整骨院を開設すれば、開業の初期費用もかからず、自分の腕一本で定年を気にせず働くことができます。
ただし、日本全国に接骨院は約4万8,000ヵ所も存在。そのなかで治療院を続けていくためには、施術の高さはもちろんのこと、顧客を獲得するためのコミュニケーション力と、経営力が必要となります。
柔道整復師の年収と収入面
柔道整復師の正規スタッフとしての給与は、勤務先の規模(所属人数)が大きいほど給与が高くなる傾向です。開業している場合には、収入に大きな個人差が生まれます。
柔道整復師の月収・年収
柔道整復師全体の平均月収は29万9,800円、平均年収は423万3,700円です。年収については、約350~450万円となる層が最も多く、柔道整復師として企業に勤めている場合、賞与の平均額は63万6,100円となっています。ちなみに、「令和3年国税庁民間給与実態統計調査」による柔道整復師の平均初任給は、21万2,000円です。勤務先の企業規模が大きいほど給与・年収が高くなる傾向があり、勤務者数1,000人以上の大きな組織では平均年収が500万円以上の場合もあります。
独立開業者の年収は、治療院が集める患者数が影響。目安は205万~1,000万円ほどとされます。
参考:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」
柔道整復師の求人状況
柔道整復師の就労者数は、約7万人です。柔道整復師の有効求人倍率(求職者に対する求人数の割合)は3.84倍で、圧倒的な売り手市場となっています。
ただし、人気のある整形外科・クリニック・スポーツジムなどの求人には、応募が集中するため、倍率は高いです。一方で、介護業界は人手不足が顕著で、求人は近年増加しています。
柔道整復師の資格取得方法
柔道整復師の養成施設とされる4年制大学の柔道整復関連学部か、3年制の柔道整復師養成専門学校の教育課程を修了し、国家試験に合格すれば、柔道整復師の資格が取得できます。
柔道整復師国家試験の概要と合格率
国家試験は年に1回、例年3月上旬に実施。試験日、受験願書の提出期限などの正式な詳細は9月初旬に官報で公告されます。
受験資格は、学校教育法第90条の規定により大学に入学することのできる者で、3年以上文部科学大臣が指定した学校または都道府県知事が指定した養成施設(いわゆる専門学校)で知識及び技能を修得した者です。
試験地は、北海道、宮城県、東京都、石川県、愛知県、大阪府、広島県、香川県、福岡県、沖縄県など。また、筆記試験の合格ラインは一般問題200問60%以上の正答率、必修問題50問の80%以上の正答率と言われています。試験科目としては、解剖学、生理学、運動学、病理学概論、衛生学・公衆衛生学、一般臨床医学、外科学概論、整形外科学、リハビリテ-ション医学、柔道整復理論、関係法規などです。受験手数料は2万3,900円(2025年度)となっています。
受験者の合格率は、ほぼ毎年65%前後。2024年(令和6年)3月3日に実施された第32回柔道整復師国家試験の受験者数は5,027名で、合格者数は3,337名、合格率は66.4%でした。
柔道整復師の学校と教育機関
柔道整復師になるための国家試験の受験には、柔道整復師養成施設として認められている専門学校か大学で、文部科学省・厚生労働省によって定められた99単位以上を履修しなくてはなりません。
柔道整復師養成施設の種類と特徴
大学を選択する場合には、医療系・福祉系などの4年制大学の関連学部学科で、必要な学科単位を4年間で履修します。柔道整復師に関連した専門知識だけでなく、一般教養科目も併せて学び、大学卒業時には学士資格も取得可能。就職活動において柔道整復師も、一般企業も目指せるメリットがあります。
一方、専門学校では柔道整復術の知識・技術とともに資格取得に特化した3年のカリキュラムで学習。通学期間が4年制大学より1年短く、経済的な負担が軽くなります。また夜間コースに通えば、働きながらの通学も可能。さらに、卒業後の就職サポートや独立開業支援といったサポートを利用できる学校もあります。
柔道整復師になるための学費と費用
柔道整復師養成施設(専門学校・短大・大学)に通って柔道整復師の資格を取得する費用は、専門学校で約400~450万円、大学で約640~710万円とされています。大学での学費が専門学校よりも高いのは、卒業までにかかる期間が1年長い4年間となっているため。金額は学校によりますが、学費の支払いについて、独自の支援制度がある養成施設も多数あります。
さらに国家試験の受験手数料が2万3,000円、国家試験取得後の免許登録申請手数料が4,800円、登録免許税が9,000円必要です。
柔道整復師のカリキュラムと専門科目
柔道整復師の養成施設では、「99単位以上かつ2,750時間以上」の学習が必要です。専門科目としては、国家試験の試験科目である解剖学、生理学、運動学、病理学概論、衛生学・公衆衛生学、一般臨床医学、外科学概論、整形外科学、リハビリテーション医学、柔道整復理論及び関係法規を中心に、学校独自のカリキュラムが組まれています。
柔道整復師になるための学校の選び方のポイント
学校選びの際は、国家試験合格率、就職実績を調べ、国家試験対策講座などの勉強会、就職相談、就職先見学などの支援・サポートがあるかを確認しましょう。また、文部科学省・厚生労働省によって定められた99単位の最低履修科目だけでなく、学校独自のカリキュラムにどんな見どころがあるかを調べ、充実した学びを得られる学校を探すことが大切です。
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