大学院とは何か?
大学院について詳しく知っている人は、あまり多くはないでしょう。大学院といえば、研究者や大学教員を目指す人が通うイメージがあります。しかし、近年では大学院は高度で専門的な職業人を育成する機関としても活用されているのです。また、社会人が仕事と両立させながら通う場所としても大学院は注目されています。ここでは、大学院の仕組みや種類について解説し、2019年度(令和元年)の大学院の入学者数や進路などについてもお伝えします。
柔軟に変化した大学院制度
大学院を取り巻く状況は大きく変化し、研究を行なう場としてだけでなく、高度な専門性を持つ職業人を育成する場としても活用されています。
従来大学院とは、学部で取り組んだ研究をさらに深める場として認識されていました。しかし、新しい知識・情報・技術が社会活動の基盤として重要性が増している今、国際的な競争力を確保するためにも大学院の役割が注目を浴びているのです。
2003年(平成15年)には、「高度な専門性が求められる職業を担うための、深い学識及び卓越した能力」を身につける場として「専門職大学院」が制度化されました(学校教育法 第99条)。また、2018年(平成30年)からは、大学院改革事業として「卓越大学院プログラム」がスタート。これは国内外の大学・研究機関・民間企業等が連携して、世界最高水準の人材を育成するプロジェクトです。
政府は「グローバル化社会の大学院教育」「新時代の大学院教育」へ積極的に取り組む姿勢であることから、今後も大学院教育は進化していくことでしょう。
大学院の役割と通っている人たち
大学院の社会的な役割は、教育基本法第99条において「学術の理論及び応用を教授研究し、その深奥をきわめ、または高度な専門性が求められる職業を担うための、深い学識及び卓越した能力を培い、文化の進展に寄与すること」と定められています。
具体的には、研究者の育成の他、自身の研究だけでなく、教育能力も兼ね備えた大学教員を育成することが挙げられます。大学教育の質を維持し、向上させるために大学院が存在するのです。
また、高度専門職業人の養成の他、社会人がキャリアアップを目指す学びの場としての役割も与えられています。そのため、社会人でも学びやすいように、夜間や通信教育として大学院の授業を受けることができるのです。
では、どのくらいの人数が大学院へ進学しているのか見ていきましょう。
大学院の入学者数
ここでは2019年度(令和元年)の学校基本調査から、大学院へ進学した人数の内訳をみていきます。
2019年度(令和元年)に、修士課程へと入学した男女の合計は72,595人でした。このうち社会人は7,286人、留学生は10,143人です。続く博士課程では、入学した男女の合計は14,991人でした。このうち社会人は6,333人、留学生は2,666人です。専門職学位課程では、入学者した男女の合計は、7,722人でした。このうち社会人は4,000人、留学生は820人です。
これらの調査結果から、専門職学位課程の入学者数に占める社会人の割合が高いことがよく分かります。
修士課程修了後の進路
修士課程修了後に就職した人の割合は、9年連続で上昇していることが分かりました。2019年(令和元年)の学校基本調査では、78.6%の院生が就職し、この数値は過去最高を記録しました。前年と比較すると0.1%上昇しています。このうち正規の職員等として就職した人の割合は75.9%でした。
博士課程修了後の進路
博士課程修了後に就職した人の割合も、修士課程修了者の場合と同じく、6年連続で伸びています。2019年(令和元年)の学校基本調査では、69.1%で過去最高を記録し、前年度より1.4%上昇しました。このうち正規の職員等として就職した人の割合は54.8%でした。
大学院の種類
大学院は、時代の流れとともにその制度の見直しが重ねられ、今では2種類に大別されます。ひとつは以前から存在する、研究者や大学教員の育成に主眼を置いた一般的な大学院。もうひとつは、2003年(平成15年)から設置がはじまった、専門職大学院です。主に社会人のニーズに応えるために設置された、大学院における新たな形態となります。世界に通用する高度専門職業人の養成を目的とした大学院です。 ここでは2種類の大学院の仕組みについてご紹介します。
一般的な大学院の修士課程
一般的な大学院の仕組みは、修士課程と5年一貫制の博士課程、前期2年・後期3年の区分制の博士課程など、様々な形態に分かれています。
修士課程設置には、2つの目的があります。広い視野に立って詳しく深い学問の知識を授けることがまずひとつ。もうひとつは専攻分野で研究する能力を培い、高度の専門性が求められる職業を遂行できる人材を養成することです。標準修業年限は2年で、修士論文または特定課題についての研究成果に対する審査を受け、試験に合格すると「修士」の学位を得られます。
一般的な大学院の博士課程
博士課程設置にも、2つの目的があります。ひとつは専攻分野について、研究者として自立して研究活動を行なうこと。もうひとつは高度に専門的な業務に取り組めるだけの研究能力とその基礎となる豊かな学識を養うことです。
標準修業年限は5年で、前期2年・後期3年に区分された博士課程と、区分のない5年一貫制の博士課程に分かれています。博士論文の審査を受け、試験に合格すると 「博士」の学位を得られます。ただし「区分制の博士前期課程2年間を、修士課程とみなす」と大学院設置基準に定められていますが、一貫制の2年間にそのような「修士」の学位授与に関する明確な定めはありません。
したがって5年一貫制の博士課程において、最終的に学位審査に合格できず、「博士」の学位が取得できない場合には、「修士」の学位も得られない可能性があり注意が必要です。新しい知識・情報・技術が社会活動の基盤となるこれからの社会では、博士号取得者の活躍の場が増えると考えられています。
専門職大学院
専門職大学院は、社会人や大学での幅広い分野の学士課程修了者を対象とし、キャリアアップや高度専門職業人を目指して理論と実践の両方を学べる場です。2003年(平成15年)にスタートした専門職学位課程は、科学技術の飛躍的な進展や、社会及び経済のグローバル化に乗り遅れることのない人材育成を目指しています。
専門職大学院として開設された主な分野は、法曹(法科大学院)、会計、MBA(ビジネス経営)・MOT(技術経営)、公共政策、公衆衛生、臨床心理、知的財産などです。2008年(平成20年)には、法科大学院と並ぶ、特定分野の大学院として、教員の養成を目的とした教職大学院も開設されています。
専門職大学院の特徴は、学び終えた理論と実務を活かすための実践を重視していること。そのため研究指導や論文審査は必要とされない場合があることです。また少人数教育を基本としているため、事例研究・現地調査などの実践的な教育方法をもとに教員と生徒の間で相互に意見を交換できます。教員のなかには世界最前線の実務家がいるので、世界に通用する実践的な教育をもとに職業倫理を養い、表現能力や交渉能力を磨けるのも魅力的です。
なお、専門職学位課程を修了すると、「修士(専門職)」「法務博士(専門職)」の学位を得られます。肩書に「(専門職)」がつくことにより、一般的な大学院の学位と区別できるのです。
社会人が学びやすい環境が整った大学院プログラム
社会人がキャリアアップのために大学院教育を有効活用しやすくするために、学びやすい環境の整備が行なわれています。職場で働きながら勉強も続けられるように、あるいは子育てをしながら社会復帰への準備をするなど、個々の状況に合わせて履修形態を選ぶことが可能です。ここでは社会人が学びやすいように配慮されている、大学院の履修形態を紹介していきましょう。
社会人特別選抜
社会人を対象に、学力試験を受けなくても良い「社会人特別選抜」が導入され、主に小論文や面接などが実施されています。
夜間大学院と昼夜開講制
時間的制約の多い社会人に配慮した制度。主に夜間に授業を開講するのが夜間大学院です。昼夜開講制は、同一学部の中に「昼間主コース」、「夜間主コース」を設け、昼間及び夜間の双方の時間帯において授業を行ないます。
通信制大学院
どうしても通学が難しい状況にある場合は、インターネット等を活用した通信制大学院という選択肢もあります。ただし、通信教育で十分な教育効果が得られる分野に限るという制約付です。
通信制大学院では、印刷教材を使った授業や放送授業とあわせて添削などの指導を受け、また面接授業を受けるなどして単位を取得します。在宅で通信制を選んでも、最終的に通学制と同じ学位を取得できるのが特徴です。
サテライト教室
駅前や都心などのアクセスの良い場所に、本校とは別のサテライトキャンパスを設置し、社会人が通いやすい配慮を行なっている大学院もあります。
科目等履修生制度
社会人にパートタイムで学習できる機会を与える制度で、従来の聴講制度を発展させた制度です。当該大学の学生以外でも授業科目を履修する場合に、単位を取得できます。ただし、非正規扱いの学生という立場上、学位の取得は認められていません。
履修証明書制度
履修証明書制度とは、職業能力証明書(ジョブ・カード・コア)として、学習成果をキャリアに生かす取り組みの一環で導入されました。大学入学資格を有する人を対象に一定のまとまりのあるプログラムを開設し、その修了者に学校教育法にもとづいて履修証明書を交付できる制度のことです。
短期在学コース
大学院修士課程の標準修業年限よりも短く、1年以上2年未満の修業年限でも修了できるよう定めたコースです。1年制コースとも呼ばれています。
長期在学コース
標準修業年限よりも長い修業年限を定めた修士課程・博士課程のことです。
長期履修学生制度
学生個人の仕事や家庭の事情に応じ、あらかじめ修業年限を超えて在学することを大学が認めた上で履修する制度のことです。
公開講座
大学の、地域へのサービス活動の一環として公開講座が開設されています。地域住民等から要望のある特定の内容について学習機会を提供し、講義を行ないます。
聴講生制度
教養を深めることに照準を合わせているため、単位を必要としない制度のこと。学びたい科目あるいは科目群だけを受講することが可能です。
博士課程後期への入学資格
大学等を卒業後に大学や研究所等において2年以上研究に従事した人には、博士課程後期への入学資格が得られる場合があります。大学院で修士の学位を有する者と同等の学力があると判定されると、博士課程前期を免除される制度です。
最新の大学院制度、卓越大学院プログラム
「卓越大学院プログラム 」は、世界トップレベルの博士人材を育成する、5年一貫の博士課程学位プログラムです。海外トップ大学や民間企業などと組織的な連携を取りながら進める、世界トップレベルの博士人材育成・交流プログラムとなります。このプログラムは、独立行政法人日本学術振興会の委員会審査を経て決定。2018年(平成30年)度の予算額は合計で56億円、個別のプロジェクト予算上限額は4億2千3百万円で組まれています。
初年度の2018年(平成30年)には、54件の申請の中から15件の事業が選ばれ、文部科学省から発表されました。2年目を迎えた2019年(令和元年)は、44件から採択された11件が事業をスタート。採択された事業を通じて、国内の大学が連携し、海外の有名大学・研究機関・企業と交流し、産学連携がさらに進むことが見込まれます。
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※この記事は、2019年10月時点の情報に基づいて作成されています。
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