高専とは?高等専門学校5つのポイント
高専こと高等専門学校は、社会が必要とする技術者を養成するため5年間(商船高専は5年半)の一貫教育を行なう高等教育機関です。
近年は海外にも展開し、世界的には高い評価を受けているものの、現状は日本国内ではロボコン(ロボットコンテスト)以外ではあまり話題になることがありません。
この記事では「高専と高校との違いは?」「進路に高専を選ぶメリットとデメリット」「一流企業揃い!?高専の就職先と進学率は?」など、5つのポイントで高専の魅力をご紹介します。
ロボコンで話題!高専とは?
高専学生はAI時代の今「日本の宝」とまで称され、ロボコンなども話題です。
そんな高専学生の魅力はどこにあるのか、実際に高専はどんな所で何を学ぶことができるのか、その概要と高専ロボコンの果たす役割などについて紹介します。
高専ってどんな所?
高専は1961年(昭和36年)6月に学校教育法の一部改正により創設されました。2019年(令和元年)時点では全国に57校あり、国立高専は1962年(昭和37年)に設置された12校を始めとし51校55キャンパス、公立高専は3校、私立高専は3校と私立が少ないのが特徴です。
高専は社会が必要とする技術者を養成するための教育機関であるため、専門知識を深く学ぶことができます。高専は元々「工業」「電気通信(情報)」「商船」の3分野で出発していたこともあり、ひと昔前までは理工学系や商船などの実践的技術者を養成するイメージが強くありました。しかし、近年ではIT革命にも即応し、すべての学科でコンピュータ教育が施されるようになっています。
他にも時代のニーズに合わせる形で、情報デザイン学科、経営情報学科、コミュニケーション情報学科、国際流通学科、生物応用化学科などの新しい学科が設置されている高専もあります。
高専ロボコンとは?
高専ロボコンは、高等専門学校連合会が主催し、内閣府、文部科学省などが後援する「アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト」のことです。開始当初はNHKのひとつの番組だったため、第1回大会からNHKで放送されています。そのため、「高専といえばロボコン」という印象を持つ方も多いのではないでしょうか?
2000年(平成12年)に高等専門学校連合会が主催に加わり、ロボコンは事実上高等専門学校における公式大会として開催されるようになりました。第31回大会となった2018年(平成30年)には、全国の高等専門学校57校62キャンパスから124チームが参加しています。
高専学生が5年間かけて学ぶ様々な専門技術や知識で作り上げられるロボットは、彼らの腕の見せ所です。毎年全国放送されるロボコンは、高専への進学理由を占める大きな要素にもなっていました。
高専ロボコンでロボット作りの楽しさに目覚めた高専学生は、大学に進学してからもロボット製作にかかわり、NHK大学ロボコンやその先のアジア大会であるABUロボコンへと出場するケースもあります。
高専と高校の3つの違い
先述したように、高専とは高等専門学校の略称です。中学校を卒業することで入学が可能である点では高等学校(高校)と同じですが、その他は大きく異なります。
高専と高校の違いは主に「政府による分類」と、「修学年限と学位」「学ぶ環境」の3つです。
順に詳しく説明します。
ここが違う!高専と高校~政府による分類~
高専の分類は「高等教育」です。高等教育には高専の他に、大学や短期大学とこれらの高等専修学校、専門学校、高等技術専門校があります。
15歳から高等教育を受けることができるのは、高専だけです。高専は学校教育法の第1条に掲げられている教育施設のひとつで、「一条校」という通称で呼ばれることもあります。
一条校は、幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学(短期大学及び大学院を含む)、高等専門学校の9部門です。
また、文部科学省が制定している教育制度のなかで、高校は「後期中等教育」に分類されています。「中等教育の後期」という分類なので、前期中等教育である中学校との連続性も多く、私立を中心に中高一貫の学校も少なくありません。
また、高専と名前が似ていてよく間違えやすいのですが、専修学校の高等課程である「高等専修学校」や、専修学校の専門課程である「専門学校」、そして職業能力開発校である「高等技術専門校」は高専とは異なる教育機関です。
ここが違う!高専と高校~専門性と学位~
高校の3年間に対し、高専は5年間という修学年限の違いがあります。
1年生から一般教育と併せて専門教育が施され、5年間の一貫教育の形で行なうため、プロフェッショナルとなるための専門的な知識を習得することが可能です。
そのため、同じ5年間でも高校卒業後に短大や専門学校へと進学した場合とでは、専門知識の量に差が出ます。また、高専を卒業すると「準学士」という称号が授与される点も、大きな魅力です。
ここが違う!高専と高校~学ぶ環境~
高校が広く社会に出るための教育であるのに対し、高専では技術者になるための実習を含む専門教育が施されます。そのため、高校で教えるのは教員免許を持った教師であるのに対して、高専はそれぞれの専門科の博士号を持った教員による授業です。
高校ではスーパーサイエンスハイスクール指定校でもない限り、博士号を持った人との日常的な会話は難しいのが現状です。学生で早いうちからスペシャリストと触れ合う機会を持てる環境は、高専の大きな魅力のひとつといえます。
また、インターンシップも大変に盛んです。インターンシップとは、学生が就業前に企業などで行なう「就業体験」で、高専では地域産業界や地方公共団体等と連携し、例年約8,000人の学生がインターンシップを経験しています。商船系の学科を除くほぼすべての国立高専がインターンシップを単位化している点も、高校との大きな違いです。
さらに、海外に拠点を持つ企業の協力によって海外インターンシッププログラムもあります。渡航に際してはJASSO(独立行政法人日本学生支援機構)からの奨学金や渡航支援金も受けられるため、将来海外での活躍を希望する高専学生の目標です。
進路に高専を選ぶメリットとデメリット
中学校を卒業後の進路に高専を検討している方へ、進路に高専を選ぶメリットとデメリットについて紹介します。
進路に高専を選ぶ3つのメリット
進路に高専を選ぶメリットは次の3つです。
ひとつめは「15歳から専門分野の研究ができる」こと、2つめは「国公立大学へ編入できる」こと、最期に「ほぼ100%の就職率」が挙げられます。ここから順に詳しく説明します。
15歳から専門分野の研究ができるのは、興味のある分野や就きたい職業が決まっている人にとって大きなメリットです。半導体工学やAIなどのプログラミング、遺伝子工学や建築デザインなど、研究したい分野の専門家が直接教えてくれ、実習や実験用の機材も充実しているなど、研究に充分な環境が整っています。特に国立高専には企業からの技術相談・共同研究・受託研究の制度や、インターンシップも充実しているので、実践的なより高い技術を身に付けることができます。
ほとんどの国公立大学が高専からの編入を受け入れており、3年次への編入(東京大学・京都大学は2年次)が可能です。編入学とは、通常は入学に必要なセンター試験を受ける必要がないということです。2018年(平成30年)の修了者のうち、進学希望者の進学率は97.8%と驚異的な合格率を誇ります。
大学への編入の他にも、高専の専攻科(2年制)への進学の道もあります。
高専学生の約60%が就職しますが、就職率はほぼ100%です。これは数値だけを見れば2019年(令和元年)4月時点の大学卒業者の97.4%と変わらないように思えますが、高専では10月時点ですでに90% 以上の内定率を誇っています。
また、詳しくは後述しますが20~30倍にものぼる求人倍率と一流企業揃いの就職先のなかでも、高専は非常に優位な就職状況です。専門的な知識・技術を身に付けており即戦力になる高専卒業者は、給与面でも優遇されるケースもあります。
進路に高専を選ぶ3つのデメリット
進路に高専を選ぶデメリットは次の3つです。
「進路の変更が難しいこと」、「センター試験を受けなくても良いこと」、そして「留年率が高いこと」です。
順に詳しく説明します。
専門分野に重きを置いたカリキュラムを履修する反面、別の分野へと興味が移った際には進路の変更が難しい面があります。
例えばほとんどの国立大学で編入を受け入れていますが、それは理工学部など専門学部でのこと。まったく分野が違う国公立大学の学部へと進学を希望する際には、他の高校卒業生と同じくセンター試験を受ける必要があり独学での受験となります。
また、センター試験を受けなくても国公立大学へ編入が可能なことは、一見するとメリットに思えます。しかしその反面、英語や国語といった文科系の教養科目の履修も少なく、センター試験等の目標がないため、高専学生自身も授業に身が入らないデメリットも生じかねません」。
教科を習得する際、特に初期の頃にはプレッシャーを受けながら半ば強制的に勉強することも必要です。高専学生になったらTOEICや漢字検定など、教養科目での独自の学習目標を設定することをおすすめします。
もうひとつ、高専は留年する人が多いことで有名です。旭川高専では2015年度(平成27年度)から2017年度(平成29年度)までの3年間の留年率を平均2.0%と公表しています。全国の公立私立高等学校の留年率は全日制が約0.2%ですから、ほぼ10倍の留年率ということになります。
留年が多い4つの原因は、「赤点が60点なこと」や、「レポートがあること」「単位制」「出席日数を重視すること」です。
高校ではテストが30点以下で赤点になるのに対し、高専の赤点は50~60点以下であることが留年の主たる原因とされています。しかし、テストは真面目に授業を受けていれば60点は取れる内容です。むしろ留年してしまうのには他に原因があるケースが多いといわれています。
つまり、留年率が高い原因には、高専が高校ではなく大学に近い、自由なシステムであることも考えられます。大学に近い代表的な特徴は、レポート制です。基礎科目だけでなく、専門科目、実験の結果報告書などのレポート提出が必須。レポートが評価の対象となりテスト重視の高校とは違うため、能動的に勉強しない人には厳しいシステムとなっています。
他にも単位制で授業の出席日数が重視されるといったシステムに順応できない高専学生は多いです。また、先述した通り、5年間という長期に渡り、目標意識を持ち続けることができないことも、留年率を上げている一因となっています。
高専学生は興味のある研究がはっきりとあり、目標を持って自立した生活を送ることができる人に向いています。
高専の学校生活とは?
高専での学校生活とは、一体どのようなものなのでしょうか?意外と知られていない高専学生の生活について紹介します。
大学のような自由な校風
どの高専も、大学のような自由な校風であることは一般的に知られており、自主性を重んじ、未知のことにチャレンジする努力が続けられることが適性とされています。
高校では入学すると「生徒」と呼ばれますが、高専での呼称は大学などと同じ「学生」です。この呼称からも分かるように、高専学生は15歳から1人の「大人」として扱われます。
大学のように服装も髪色も自由で、制服がない高専も多くありますが、まれに本科の1~3年生のみ制服という高専もあります。
アルバイトは?運転免許は?
学業に影響しない範囲の週末のアルバイトは認められています。また、運転免許の取得も、届出をすれば可能としているところがほとんどです。
一流企業揃い!?高専の就職先と進学率は?
高専学生は学力のベースが高く、若いうちから実践的なものづくり経験があります。
しかも、大学生と比べて2歳若く、準学士号のため給与が比較的安価に設定されている企業がほとんどであるため、企業側にとってはメリットしかありません。そのため、高専学生は就職市場において、非常に人気です。
今やIT国である日本を支えるには欠かせない、ゴールデンエイジと呼ばれる高専学生たちの就職状況や進学率についてご紹介します。
一流企業揃いの高い求人倍率
高専学生のほとんどは、企業研究やOB訪問、会社説明会への出席といったいわゆる「就職活動」をすることなく就職先が決まります。
求人倍率は24~28倍なので、高専学生からではなく企業側からインターンシップの誘いや工場見学のオファーといった「高専学生獲得作戦」が繰り広げられているのです。
2018年(平成30年)の就職先ランキングでは1位がJR東海、2位がサントリーグループ、3位が花王、4位には、ノーベル化学賞を受賞した吉野彰氏が名誉フェローを務める旭化成と続きます。
トップ10には一流企業が名を連ね、それぞれに数十人規模で就職を果たしています。
約4割が大学進学
高専の卒業生の約4割が大学への編入を希望し、2018年(平成30年)の本科修了者のうち進学希望者の進学率は97.8%と驚異的な合格率を誇ります。複数の国公私立大学を受験することが可能なため、受験機会の多さも利点のひとつです。
特に長岡技術科学大学と豊橋技術科学大学は、主に高専卒業者を受け入れるために創設された学校なので、毎年多くの高専学生が進学しています。
まとめ
この記事では、高専こと高等専門学校と高校との違いや、進路に高専を選ぶメリットとデメリット、一流企業揃いの高専学生の就職先と進学率など、高専の魅力を紹介しました。
高専は高い技術と学力を身に付けることができ、就職や進学にも大変有利な進学先だといえます。
※この記事は、2019年(令和元年)11月時点の情報に基づいて作成されています。
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