映画「劇場」とは
恋愛純文学としては異例の累計50万部以上の大ヒットを記録した「劇場」は、お笑いタレントの「又吉直樹」(またよしなおき)さんによる長編小説です。大作である「火花」よりも前に執筆していたこの小説は、又吉直樹さんの原点とも言える小説と言われています。そして、「世界の中心で愛を叫ぶ」や「リバーズ・エッジ」などの監督として知られている「行定勲」(ゆきさだいさお)監督によって、映画化されました。
本記事では、映画「劇場」について、あらすじをはじめ、キャスト、主題歌などを詳しくご紹介します。
映画「劇場」のあらすじ
ここでは、2020年(令和2年)7月17日に公開された映画「劇場」のあらすじについてまとめました。
売れない劇作家の「永田」(ながた)は、高校からの付き合いである友人と共に劇団「おろか」を立ち上げます。しかし、前衛的(ぜんえいてき:時代の枠にとらわれない)な永田の脚本と演出は、上演するたびに酷評を受け続けることに。さらに客足も減り、ついには永田と共に劇団を支え合ってきた仲間の気持ちも離れてしまうのです。劇団「おろか」は事実上の離散状態となり、永田は理想を追い求める心と厳しい現実の狭間でどうしようもない孤独を感じていました。
そんな苦悩の日々を送るなかで、永田は町で同じスニーカーを履いている「沙希」(さき)と出会います。普段は女性に声をかけることもない永田ですが、このときはなぜか見知らぬ女性に声をかけました。突然、永田に声をかけられた沙希は戸惑いましたが、様子がおかしい永田を放っておくことができなかったのです。
その後、お互いに自分の話をしていくうちに、永田は沙希が女優になる夢を抱き上京してきた女性だということを知ります。こうして、距離も心も近くなっていった2人は、一緒に住み始めることになりました。永田は自分を応援し続ける沙希の思いに感謝し、彼女を大切にしていましたが、やがて現実と理想の狭間でさらに演劇に没頭していってしまうのです。
映画「劇場」のキャスト
ここでは、映画「劇場」の出演キャストについてまとめました。
山崎賢人(永田役)
今作の主人公である永田を演じるのは、多くのヒット映画で主演を務める「山崎賢人」(やまざきけんと)さんです。山崎賢人さんは、理想と現実の狭間で苦悩する若者を演じるために、「無精ひげ」を生やしたことでも話題になりました。またひとつの作品のなかで、物憂げな表情や不器用な人間性など、様々な姿を見ることができます。
松岡茉優(沙希役)
沙希を演じるのは、「万引き家族」や「ちはやふる」で反響を呼んだ実力派女優である「松岡茉優」(まつおかまゆ)さんです。松岡茉優さんは、永田の不甲斐なさや、プライドの高さからくる劣等感をぶつけられながら、常に心の支えとして生きる沙希を魅力的なヒロインとして演じています。
寛一郎(野原役)
永田の友人である「野原」(のはら)役を務めるのは、「ナミヤ雑貨店の奇蹟」で新人男優賞を獲得した「寛一郎」(かんいちろう)さんです。寛一郎さんは、これまで数多くの映画で新人男優賞や助演男優賞を獲得している俳優であり、今作では主人公である永田の理解者として作品に出演しています。
伊藤沙莉(青山役)
劇団「おろか」の唯一の女性団員「青山」(あおやま)を務めるのは、女優業以外にも声優としても活躍する「伊藤沙莉」(いとうさいり)さんです。伊藤沙莉さんは、社会に馴染めない永田を助けようとする青山の現実的な行動を演じています。
井口理 (小峰役)
永田と同じ年で、注目を集めている劇団「まだ死んでないよ」を主宰する「小峰」(こみね)を演じるのは、人気バンドである「King Gnu」(キングヌー)のボーカルなどを担当している「井口理」(いぐちさとる)さんです。主要キャストとして抜擢されたのは今作が初であり、マルチな才能を発揮している井口理さんを垣間見ることができます。
浅香航大(田所役)
「田所」(たどころ)は、沙希がバイトをしている居酒屋の仲間で、小峰が主宰する人気劇団「まだ死んでないよ」の団員のひとり。そんな田所を演じるのは「浅香航大」(あさかこうだい)さんです。ヒットドラマとなった「花ざかりの君たちへ~イケメン☆パラダイス~2011」でデビュー、その後も「あなたの番です」などに出演しています。
映画「劇場」の主題歌
映画「劇場」には主題歌がありません。公開前には、本作品の音楽をすべて担当している「曾我部恵一」(そかべけいいち)さんや、King Gnuのボーカルである井口理さんが主題歌を担うのではないかと噂されていました。しかし、本作品のメイキング映像や放映により、主題歌はないことが明らかになったのです。
「劇場」の音楽を担当
音楽担当である曾我部恵一さんは、過去に大きな人気を博した「サニーデイ・サービス」のボーカルとギターを担当。自身のロックバンドやソロ活動の他にも、楽曲提供・執筆・俳優などでマルチな活躍をされています。
行定勲監督が、曾我部恵一さんに音楽をオファーしたのは、曾我部恵一さんが下北沢に縁の深い人物であることが大きな理由です。実際、曾我部恵一さんは下北沢でカフェやレコードショップの経営をしており、「劇場」の舞台である下北沢について詳しいとされています。
また、曾我部恵一さんが手掛ける音楽は、青春を感じつつも優しく包んでくれるような曲調であるという理由から、映画「劇場」の音楽担当に抜擢。予告映像に流れるどこかアンニュイで優しさと繊細さを感じる曲調は、「劇場」の雰囲気と見事にマッチしています。
「劇場」のヒロインが元になった歌「沙希」
「yonige」(ヨニゲ)という人気ミュージックバンドの「沙希」という曲は、本作品に登場するヒロイン「沙希」に大きな影響を受けて作られた曲。映画「劇場」の作者である又吉直樹さんもこの曲について取り上げており、大きな反響を呼んでいました。
「沙希」の歌詞に注目してみると、実際に小説版・映画版ともにヒロインである沙希のセリフに重なる歌詞が存在しています。なかでも、「得意げにきみは言う 世界で一番安全な場所」という歌詞は、沙希が永田に対して、心の支えとして永田を励ますために言ったセリフとほとんどニュアンスが一致しているのです。
映画「劇場」と小説「劇場」の違い
小説版の最後(※ネタバレ注意)
又吉直樹さんが執筆した小説版では、永田と沙希の歪んだ関係性の末、人によっては救われないと思うようなラストになっています。2人の7年間に渡る恋愛と依存の結末は、胸を痛めるどうしようもなさを感じることも。特に沙希の永田に対するひた向きな姿に、思わず心を奪われるような感覚を覚える人も少なくはありません。
小説版「劇場」の内容は非常に魅力的であり、演劇の経験がある人、夢を追いかけていた人にとって強く刺さる作品となっています。
映画版の最後(※ネタバレ注意)
映画版「劇場」の最後は、小説版とは大きく異なり、良い意味で予想を裏切られるような展開です。小説版の胸を痛めるようなラストと異なり、こちらは救いのあるラスト。多くの方に驚きと涙を誘うラストであると共に、タイトルである「劇場」がそのままの意味として締めくくられます。
映画を担当した行定勲監督によると、ラストのシーンは映画でしかできない大きな仕掛けとして作ったとのこと。関係者だけではなく、初号の試写会では会場から嗚咽(おえつ)が聞こえてくるほど強烈な印象を残しました。
又吉直樹さん執筆の「劇場」は、夢を追いかける不器用な青年と献身的な女性、またその周りにいる人々のリアルな心理描写がある、心に残る恋愛純文学となっています。
※この記事は、2023年(令和5年)9月時点の情報に基づいて作成されています。
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