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「病気があっても病人にしない」
寄り添う医療で笑顔をサポート
今回、登場していただく、まつばら循環器クリニック院長の松原徹夫先生は、循環器内科医師として早くから心臓カテーテル治療に取り組み、この治療の普及や、国内外での技術指導に尽力してきた第一人者です。心臓カテーテル治療を数多く手がけるなかで、心臓疾患の発症リスクを高める生活習慣病の改善こそ重要だと考え、2025年(令和7年)に名古屋市中川区で開院しました。先進医療から予防医療への転換を決意されたいきさつや、クリニックで受けられる検査・治療、生活改善指導について伺います。

心臓カテーテル治療は、ちょうど私が医師になった時期、1980年代から急速に発展しました。カテーテルは細くてやわらかい管状の医療器具で、血管内に挿入して検査・治療を行います。従来の外科手術よりも患者さんの負担を軽減できる方法として注目されていたのです。
当時の私は、父親が脳神経外科医師だったこともあり、自分も専門性の高い分野に取り組みたいと思っていました。また、研修医として所属した県立岐阜病院(現岐阜県総合医療センター)の救命救急センターで、心筋梗塞や狭心症で搬送されてくる患者さんをよく診ていましたから、そうした患者さんの負担を軽減できるカテーテル治療に関心を持ったのです。
初期のカテーテルはコントロールが難しくて大変でしたが、私は子どもの頃からラジオを分解して組み立て直すような作業が好きだったので、向いていたのかも知れませんね(笑)。

心臓カテーテル治療(経皮的冠動脈形成術)は、冠動脈(心臓に酸素や栄養を供給する動脈)が狭くなったり詰まったりした箇所に、細いワイヤーを通過させ、ワイヤーに沿ってバルーン(風船)を挿入し、バルーンを膨らませて冠動脈を拡げる治療法です。
当時のワイヤーやバルーンは性能が悪く、狭窄病変や閉塞病変を通過することができなかったり、拡げてもすぐに閉塞してしまったりと大変でした。
また、高血圧や糖尿病を長く患っていた人や人工透析を受けている人の病変は、石灰化して硬くなっていることが多く、バルーンで拡張することができないことも多かったんです。なので、バルーン治療を行う前に、先端に人工ダイヤモンドの粒子が付いたドリルを高速回転させ、石灰化した部分を削る技術(ロータブレーター)が開発されました。勤務医時代は、このロータブレーター治療を毎日のように行っていましたね。
その後、バルーンで拡げた冠動脈が再狭窄しないように、ステントという金属のメッシュ状のパイプを血管内に留めておく治療が始まり、カテーテル治療は急速に広まっていきました。これまで在籍してきた名古屋共立病院循環器センター、豊橋ハートセンター、名古屋ハートセンターで、通算5,000件以上の心臓カテーテル治療を行ってきたと思います。
同時に、他の病院が困難な心臓カテーテル治療に立ち会ったり、国内外で心臓カテーテル治療の講演、指導をしたりと、この治療法が大きく進化していく時期にかかわれたのは良い経験でした。

心臓カテーテル治療のできる若い医師が育ってきましたから、これからは次世代に経験を積んでもらわなければなりませんし、心臓カテーテル治療が成功しても、治療後の全身管理をしっかり行わなければ再発したり、新しい病変が現れたりするケースも多くあるんです。
心臓カテーテル治療で冠動脈にステントを留置した患者さんには、ステントに血栓が付着するのを防ぐために血液をサラサラにする薬を服用してもらうのですが、この薬は裏を返せば血が止まりにくくなる作用もありますから、脳出血など出血性の疾患を発症した際に重症化するリスクもあるんです。
このように心臓カテーテル治療後の管理もとても大切なため、患者さんに丁寧に説明するのですが、中には心臓カテーテル治療をしたことによって逆に不安を抱かれて元気がなくなってしまう方もいました。このようなことから、患者さんが心身ともに元気になることが大切だと考えるようになりました。
そんな経緯があり、これまでは心臓カテーテル治療に専念してきたのですが、手術に至る前の予防や早期発見・早期治療、また術後の心身のケアなどに取り組んで、患者さんを笑顔にしていきたいと思い、開院することにしたのです。

健康診断で高血圧や不整脈を指摘された方、日常生活で動悸、胸の痛みを感じる方などの精密検査に対応し、心筋梗塞、狭心症などの可能性がないか診させていただきます。
また、循環器疾患は心臓や冠動脈だけの病気ではありません。全身に血液を送り出している大動脈の瘤や解離、下肢動脈の狭窄、閉塞病変なども診断します。
循環器疾患は生活習慣病と関係が深く、高血圧や糖尿病、脂質異常症、肥満が進行すると動脈硬化を引き起こし、心臓疾患や脳卒中などにつながるリスクが高くなります。ですから、当院では生活習慣病の改善、患者さんの全身管理に対応して、食生活や運動習慣の改善に寄り添っていきたいと考えています。

CT検査は立体的で詳細な体内の画像を得られますが、冠動脈は常に活発に動いているので撮影が難しいんです。その点、64列マルチスライスCTは、従来の物よりも高速で撮影できますので、動いている心臓や冠動脈の状態でも、しっかり捉えて撮影することができるんですよ。
また、これまでの心臓カテーテルによる冠動脈造影(冠動脈の状態を調べる検査)では、狭窄病変は分かっても、狭窄の原因は分かりませんでしたが、この64列マルチスライスCTによる冠動脈造影では、狭窄病変のプラーク(悪玉コレステロールが蓄積した沈着物)の質まで確認できるんです。
プラークの「量(狭窄度)」は中等度だったとしてもプラークの「質」が悪ければ、心筋梗塞発症のリスクは高くなります。このため、CTによる冠動脈造影でプラークの質をしっかり把握して、リスクが高いと判断した場合は、薬物療法にてプラークの安定化を行い、心筋梗塞や突然死などのリスクを低くすることができるのです。
定期的に検査に来ていただくだけで、患者さんを笑顔にできるケースが増えたらいいですね。

江戸時代の医師が書き残した健康の心得にも「食事は薄味にして、食べ過ぎず、脂っこい食べ物や冷たい食べ物を避ける。牛車や馬車に乗らず、よく歩きなさい」とあります。つまり、江戸時代から、食生活や運動習慣が重要であるということが分かっていたのです。
生活習慣病は自覚症状が乏しいので、気にしながらも放置される方が多いのですが、症状が出てからでは遅いケースがほとんどです。
患者さんには、できるだけ食生活の見直しや運動習慣を付けていくことも意識していただきながら、循環器疾患や生活習慣病を重症化させず、「病気があっても病人にしない」ことをモットーに、できるだけ笑顔で生活できるようにサポートしたいと考えています。少しでも気になることがあったら、相談しに来てくださいね。
病院名・役職はインタビュー当時のものです。
インタビュー:2025年6月18日
| 1984年 |
東海大学 卒業 |
|---|---|
| 1985年 |
県立岐阜病院 研修医 |
| 1987年 |
県立岐阜病院 救命救急センター |
| 1988年 |
県立岐阜病院 循環器科 |
| 1992年 |
県立岐阜病院 循環器科 救命救急センター部 医長 |
| 2001年 |
名古屋共立病院循環器センター 循環器科 部長 |
| 2004年 |
豊橋ハートセンター 循環器科 部長 |
| 2008年 |
名古屋ハートセンター 副院長 |
| 2012年 |
豊橋ハートセンター 副院長 |
| 2025年 |
まつばら循環器クリニック 開院 |