人気の病院・名医紹介Interview
病気の辛さや不安に寄り添い、
一人ひとりに最適な医療を届けたい
今回インタビューを受けていただいたドクターは、桑名市総合医療センターと三重大学医学部附属病院で診療にあたる、呼吸器内科医師・伊藤稔之(いとうとしゆき)先生です。両病院は、いずれも地域医療の拠点となる総合病院で、広い医療圏を担い、高度な医療を提供しています。この両病院で、様々な症例を診療する伊藤稔之先生に、呼吸器内科で受けられる検査や診療、注意したい呼吸器疾患とその治療法、また「患者さんとのコミュニケーションを大切にしたい」という診療方針について伺いました。

呼吸器内科は、のど・気管・気管支・肺など、呼吸にかかわる臓器の病気を専門的に扱う診療科です。よく知られている呼吸器疾患には、喘息や肺炎、タバコなどの有害物質を吸い続けることで肺が炎症を起こす病気、COPD (慢性閉塞性肺疾患)などがあります。
こうした病気で呼吸がしづらくなると生活に支障が出ますし、呼吸器は生命に直結する器官です。長引く咳や痰、息切れ、また呼吸の際に「ゼーゼー、ヒューヒュー」という音がする喘鳴(ぜんめい)のある方は、呼吸器内科に相談にいらしてください。
そして、咳や痰などは、咳止め薬や去痰薬の服用で鎮まることもありますが、その原因になっている感染や炎症を治療しないと再発したり、重症化したりすることがあるので、原因を突きとめて、根本的に治療するのが呼吸器を専門とする医師の責任だと考えています。

よく知られている胸部レントゲン検査では、撮影した画像をもとに肺に異変がないかを確かめます。また、血液検査ではアレルギーの有無や種類を判断できますし、呼吸機能検査は、機器を使って、息を吸う力、吐く力、酸素を取り込む能力を測定する検査です。
こうした検査で異常が疑われる場合は、内視鏡を入れて、異変やダメージがあると思われる部分の組織を取って病理学的に確認することもあります。
このように色々な方法で呼吸器疾患にアプローチできるようになってきていますが、やはり診察の第一歩は患者さんから症状の経緯や辛さを聞くことです。患者さんとのやり取りを通して、不調や不安に寄り添いながら、検査や治療を進めることが大切だと思っています。

非結核性抗酸菌症という病気は、最近、メディアで取り上げられるようになったせいか、患者さんが症状を自覚して受診されたり、症状がない方でも診断技術の向上によって検診を受けたりして、診断に至ることが増えてきました。この病気は結核菌に似たMAC(マック)菌に肺が感染することで発症するため肺MAC症とも呼ばれます。
結核と違って人から人への感染は基本的に起きませんが、MAC菌は土壌や水まわりなど身近な場所にいるので、触れる機会が多いのです。この菌が肺に定着すると咳や痰が出て、進行すると息苦しくなり、生活に差し支える場合があります。
まだ特効薬がなく、進行を抑える薬を長期間、飲み続けていただく必要があるので根気が必要です。患者さんが治療の意欲を失くさないように、重症化を防ぐことの大切さをよく説明して、納得して治療を続けてもらえるように努めています。
睡眠時無呼吸症候群は、寝ている間に何度も呼吸が止まってしまう病気です。眠りが浅くなるため、日中の活動に支障が出ることや、血液中の酸素が不足して心臓や脳に負担がかかって、心筋梗塞や脳卒中を発症しやすくなることがあります。
呼吸が止まるのは眠っているときなので、本人は気付きにくいかも知れませんが、ご家族に「いびきが大きい」、「睡眠中に呼吸が止まっている」と指摘されたり、日中に強い眠気やだるさを感じたりする方は、一度、相談していただきたいです。
その結果、睡眠時無呼吸症候群だと分かれば、寝ている間はマウスピースをして気道を確保する方法や、鼻から空気を送り込むCPAP(シーパップ)という装置があります。
日中の眠気は勉強や仕事、家事に差し障りますし、運転や機械作業をされる方は事故の危険がありますから、この病気の改善は他の人の命を守ることにも繫がると捉えて治療していただきたいですね。

それは気胸(ききょう)という病気のことで、肺に穴が開いて空気が漏れて、しぼんでしまい、息苦しくなります。10~30代の若い男性で、背が高く、痩せ型の、いわゆるモデル体型の人が多く発症するので、イケメン病とも呼ばれるのです。
けれども、女性や喫煙歴の長い高齢の方も発症しますし、胸部の打撲や骨折で肺が傷ついて起きることもありますから、若い男性だけの病気ではありません。急に胸が痛くなり、咳や呼吸困難を伴うときは、受診していただきたいです。
軽度の気胸でしたら安静にして改善を待つこともありますし、肺から漏れた空気が胸腔に溜まっている場合は空気を抜く処置をしたり、手術で肺に空いた穴をふさいだりする治療を行います。

当センターは、桑員地区(そういんちく)と呼ばれる2市2町(桑名市・いなべ市・東員町・木曽岬町)のみなさんの健康を守る総合病院で、その役割を果たすために、救急外来を持ち、検査から入院、手術まで完結できる機能とスタッフを備えています。
また、一般的な医療機関が導入していない、高度な先進医療や新しい治療法を積極的に取り入れて、必要としている患者さんに提供するのも当センターの使命のひとつです。
例えば、これまで喘息の治療は、発作が起きたらステロイド薬を吸入して、気管支の炎症を鎮めるのが主流でしたが、新しい治療薬として生物学的製剤が開発されています。この薬を喘息の症状がないときも使用することで、気道の炎症を抑えて症状をコントロールすることが期待できるようになってきました。
こうした新しい治療が、必要な患者さんに行き届くように、一人ひとりの患者さんにとって最適な治療は何かを判断して診療に取り組んでいます。

幼いときに身近な人が亡くなる経験をしまして、その出来事が記憶に深く残りました。それ以来、助けが必要な方や、苦しんでいる方の力になりたいと考えるようになったのが医師を志すきっかけになっています。
呼吸器内科を専門にしたのは、医師として働き始めた頃に色々な診療科を経験させていただいたなかで、生命に直結する呼吸器を診ることや、急性期から慢性期まで多くの場面にかかわれることに、やりがいを感じたからです。
また、呼吸器疾患は数が多く、早急に対応した方が良い疾患もあれば、長く付き合っていく病気もあります。そうした多くの患者さんと出会うことで、診療に深みを持たせたいです。

新型コロナウイルス感染症の流行は大変な経験でしたが、みなさんが感染対策に取り組まれるようになったのは良いことだと思います。喘息やCOPDなどの呼吸器疾患のある方が感染症にかかると、持病の症状も深刻になるリスクが高いですから、これからも手洗いやうがいを続けて、感染を防いでください。
そして、喫煙はCOPDや肺がんなどのリスクを高めますので、できる限りタバコを避けて、吸われている方は、禁煙を思い立ったらすぐ始めていただきたいです。また、禁煙治療は保険適応になるケースもあり、治療を実施する医療機関は増えていますから、相談してください。
病院名・役職はインタビュー当時のものです。
インタビュー:2024年9月6日
| 2016年 |
三重大学医学部医学科卒業 |
|---|---|
| 2016年 |
JA三重厚生連 鈴鹿中央総合病院(研修医) |
| 2018年 |
地方独立行政法人 三重県立総合医療センター 呼吸器内科 |
| 2022年 |
国立大学法人 三重大学医学部附属病院 呼吸器内科 |
| 日本内科学会 |
内科専門医 |
|---|---|
| 日本呼吸器学会 |
呼吸器専門医 |
| 日本アレルギー学会 |
アレルギー専門医 |
| 日本呼吸器内視鏡学会 |
認定気管支鏡専門医 |
| 日本肺癌学会 |
- |
| 日本喘息学会 |
- |