人気の病院・名医紹介Interview
在宅医療を受ける人と家族、提供する
スタッフ、すべての人を幸せにしたい
今回インタビューを受けて頂いたドクターは、正翔会クリニック、理事長の長尾強志先生です。病院勤務を経て、2013年(平成25年)、安心な在宅医療の提供をめざして愛知県江南市で開業。現在は愛知県と岐阜県に6つの正翔会クリニックを展開し、広い医療圏の在宅医療を担っています。
在宅医療を希望する人の年齢や症状は様々で、このため正翔会クリニックには幅広い診療科の医師と、多職種の専門スタッフが在籍し、24時間、365日体制で対応しているのです。
循環器科の医師として、スタッフと共に在宅医療に取り組む長尾強志先生に、開業のきっかけや、在宅医療の現在と今後について伺いました。

きっかけは、勤務医時代に担当した、忘れがたい2人の入院患者さんでした。ひとりは「私はもう高齢だから、退院したら最期は自宅で大好きなビールを飲みながら過ごしたい」と希望されていたのですが、回復されず、退院できないまま亡くなられたのです。
その出来事が心残りでしたし、人生の最後を自分らしく迎えるのは大事なことだと改めて思いました。しかし、自宅で過ごす患者さんを最後まで診られる医師は少ないのが現実です。その頃から、在宅医療に取り組みたいと考えるようになりました。
もうひとりの患者さんは、入院中にリハビリテーションを頑張られて、人工呼吸器から離脱できることになった方で、私が「よかったですね、ご自宅に帰れますよ」と言ったところ、「私はひとり住まいだから、具合が悪くなったとき対応してくれる人がいません。こんな状態で家に帰るのは不安です」と言われたのです。
それで開業する決心がつきました。その患者さんに「退院後も僕が責任を持ちますから、少し待って下さい」と約束して、3ヵ月後に愛知県江南市で開業したのです。

当初は個人クリニックのつもりで3年間やってきましたが、考えていた以上に在宅医療を望まれる患者さんが多く、その要望に応えるためにクリニックが増えていきました。
現在の体制は、クリニックごとに決まった患者さんを担当するのではなく、一人ひとりの患者さんが必要とする診療科の医師や専門スタッフが訪問しています。これができるのは、当院に様々な診療科の医師が在籍しており、幅広い病状の診断や処置が可能だからです。
また、当院には理学療法士や作業療法士、管理栄養士、言語聴覚士もいますので、訪問リハビリテーションや食生活指導などもしています。
こうした医師と専門職のチームで、定期的な訪問診療に伺い、急に具合が悪くなった場合は駆け付ける、24時間、365日対応のクリニックです。

退院後、ご家庭で治療やリハビリテーションを続けたい方や、ひとりでは通院できない方、日常的に介護や看護の必要な方などが在宅医療の対象となります。
また、言語聴覚士が言葉の発達が遅いお子さんの訓練をしたり、高齢患者さんの誤嚥性肺炎を予防するために、食事の飲み込み方を改善指導したりすることもあります。
その他にも、家族や地域との交流がなく、孤立状態の人が体調を悪くして、自治体の職員が病院受診できるように尽力しても、本人が拒否されるケースがあるのです。そういう人に、治療すれば良くなることや、医療費の支援制度があることを説明して、納得してもらい、患者さんと病院との懸け橋になることもあります。

そうですね。まず、入院から在宅医療に切り替える際に、点滴や呼吸器、経管栄養などが必要な患者さんなら、そうした医療機器をご自宅に設置する準備があります。そのとき、患者さんのベッド周りを整理して、医療機器を置くスペースを確保するといった環境整備も大切な仕事です。
また、ご家族と在宅患者さんが一緒に旅行をしたいという要望があったので、当院の看護師が同行したこともあります。旅先でも看護師が点滴や服薬の管理をして、万一、症状が悪化されたときは対応できるので、安心して旅行を楽しんでもらえました。

そうですね。当院は自分や家族を犠牲にするような働き方を推奨していません。休暇をきちんと取得してもらい、「働くときは働き、休むときは休む」職場をめざしていますし、リフレッシュのために旅行をしたいスタッフには、旅行代を補助する制度があります。
また、積極的にデジタルツールを取り入れたり、労務管理や医療材料の在庫管理を電子システム化したりして、スタッフの負担を軽減してきました。
私達がめざしているのは、患者さんや、そのご家族、このクリニックで働く仲間など、当院にかかわるすべての人がハッピーになることです。お互いに何でも話せる関係を築いて、提案し合い、学び合って、より良い医療を患者さんに提供できるクリニックに成長していきたいと考えています。

父親が医師だったこともあって、母親が私を医師にしたいと教育熱心だったんです。その情熱に引っ張られて医師になりましたが、患者さんに接してみて、自分は人が好きなのだと分かりました。子どもの頃から、周囲のおじいちゃん、おばあちゃんが大好きで、この人達の笑顔をずっと見ていたいと思っていましたから、それが出発点になって、在宅医療にたどり着いたのだと思います。
在宅患者さんのご家族が疲れているとき、あるいは遠方にいて患者さんを支えられない場合、当院が家族の代わりになり、患者さんとご家族の安心を守っていきたいですね。
その一方で、患者さんの健康状態や、ご家族の状況によっては、在宅医療よりも入院される方が良いケースがありますから、そう判断したら連携病院に橋渡しをして、スムーズに入院治療に移行できるように努めています。

在宅患者さんと、そのご家族の安心を守るのは、短期間ならできると思いますが、看護や介護は長く続きます。患者さんの症状が重い日や、ご家族が疲れてしまう日もあるのです。
そういうときも切れ目なく、当院が何年も何十年も安心を提供し続けないと、患者さんとご家族の信頼を得られないと思います。ですから、医師やスタッフが長く働ける職場環境を整え、地域の医療機関やケアマネージャーの方たちと連携を密にして、継続的に在宅医療に取り組んでいくつもりです。
住み慣れた家や地域で医療を受けながら、自分らしく過ごしたいという患者さんやご家族は、気軽に相談して下さい。
病院名・役職はインタビュー当時のものです。
インタビュー:2023年10月25日
| 2005年 |
防衛医科大学校医学部卒業 |
|---|---|
| 2005年 |
防衛医科大学付属病院 循環器内科 |
| 2007年 |
横浜中央病院 循環器内科 |
| 2008年 |
総合犬山中央病院 循環器内科 |
| 2011年 |
高知医療センター 循環器内科 |
| 2011年 |
総合犬山中央病院 循環器内科 |
| 2013年 |
ながお在宅クリニック開設 |
| 2015年 |
医療法人正翔会設立 |